130918-001-のコピー.jpg

健康な歯肉の厚みはこのくらいです。

 歯周疾患にかかるとどのような変化が起こるのか簡単に説明します。歯肉と骨と歯根のそれぞれの位置関係に注目して下さい。

*専門知識の無い方が理解しやすいようできるだけ平易な表現に努めました。

130918-007-_edited-1.jpg

「歯肉炎」です。まだ骨に大きな変化はありません。

 歯周疾患はまず歯肉炎から始まります。この時、骨には目立った変化は起こりません。歯肉だけに炎症が起きている状態ですから適切に対処すれば健康な状態に戻ります。

130918-011-_edited-1.jpg

さあ、いよいよ「歯周病」の始まりです。歯周外科手術も検討しましょう。

 隣の「歯肉炎」と良く見比べてみましょう。歯根と骨の間に歯肉が入り込んできているのが理解できるでしょうか(青矢印)。そうです。歯周病とは歯根と骨の間に炎症を引き起こした歯肉が割って入り、歯根と骨の接合部を分断していく病気なのです。
 手術をせずに病気の進行を止められるのか、手術をすれば止められるのかを判断しなければなりません。手術が必要ならば、病気の程度が軽いほど、手術も簡単で予後(治療結果)も良好です。術後の痛みもほとんどありません。

130918-017-_edited-1.jpg

かなり歯周病が進行してきました。歯周外科をするならこの辺が限界。

 その後も歯肉の侵食はすすみます(青矢印が長くなりました)。この頃には、健康だった左右歯根の間にまで侵食は広がり、歯根と骨の接合部はどんどん破壊されていきます。さらに接合部だけでなくその付近の骨までもが吸収してどんどん無くなっていきます
 治療目的によりますが手術は可能です。ただし病気の進行に比例して予後(治療結果)はだんだん悪くなっていきます。

130918-021-_edited-1.jpg

そろそろ「抜歯」について考えてみましょうか。

 ここまで骨の破壊が進むと歯周外科手術は行っても上手くいかないことが多く、痛みや腫れといった病状次第では「抜歯」の判断をしなければなりません。

 俗に言う「手遅れ」という事になるでしょうか。

歯周疾患専門医が多く在籍している国内最大の学会である「日本歯周病学会」ホームページに、一般の方向けのQ&Aが公開されています。本ページの説明と関連のあるものはリンクを張っていますので一度ご覧になると良いと思います。

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  自分の歯を残してもらいたいので歯科医院に行ったのですが、抜いた方が良いと言われました。歯周病の治療をしても自分の歯が残らないのでしょうか。

実例でご説明。○で囲んだ部分がこれから解説する歯周疾患です。

 喫煙者です(外科手術を機に禁煙されました)。最終的には、上下左右の奥歯は全て歯周外科手術を施術しました。写真は外科手術前の状態ですが、外見では歯周疾患があると判らないでしょうね。

 歯周疾患に罹患しているにもかかわらず、その症状が表に現れにくいのは「喫煙者」にみられる特長です

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  (歯周病に)どうして煙草が悪いのですか?


 症状の出にくい喫煙者は、出血、腫れ、痛みなどの症状が出たとき、病気がかなり進行しており「手遅れ(=抜歯)」となることも少なくありません。

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  重度の歯周病にかかっていると診断されました。早期に抜いた方が良いといわれたのですが、なんとか歯を残せないのでしょうか。


歯周外科手術をしています。歯肉にメスを入れ、歯肉を剥離させています。炎症により増殖した歯肉と骨、歯根が露出しています。

 歯周外科手術には手術目的に応じて複数の術式があります。詳しい説明は、担当医にご相談になると良いでしょう。

 いずれの歯周外科手術も

 ◎保険診療では、検査1→処置→検査2→処置→検査3→外科手術の順番となります。
    (残存歯数と通院回数によりますが検査1から手術まで1カ月以上かかるでしょうか)

 ◎メスで歯肉を切開し、歯肉を剥離して歯槽骨を露出させますので、必ず歯肉を縫合糸で縫います
   一般的に縫合糸は術後1~2週間後に歯科医院で抜糸してもらうことになります

といった点は共通しています。

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  歯周病の歯肉を外科手術すると言われたのですが、怖いです。実際にはどのような治療で、時間はどれくらいかかるのでしょうか。またその後、どうなるのでしょうか。

130709-0152-_edited-1.jpg
 円で囲まれた部分が、歯根と歯槽骨の間に侵食してきた炎症性の歯肉です。模型と同じように歯根と骨の間に割って入っているのが観察できたでしょうか。

 この歯肉が歯根の先端に向かって骨を破壊しながらどんどん侵食していきます。何とかしてこの侵食を止めなければなりません。もはや薬を塗るとか、歯根の周囲をクリーニングするといった手術以外の治療方法は一時的な気休めにしかなりません。

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  歯ぐきが腫れたときに歯科医院へ行くと、ポケットといわれる部分を洗って薬をくれます。それで腫れは治るのですが、数ヶ月たつとまた腫れてしまいます。どうしてでしょうか?

 歯を失いたくないのなら、手術可能なうちに病的な組織を取り除き、骨の破壊を止める以外に方法が無いのです。

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  歯周病の再生治療はどの程度、歯ぐきや(歯槽)骨が再生するのでしょうか。

130709-0212-_edited-1.jpg
 炎症性歯肉を取り除くとこのような状態になります。左の歯は歯根が歯槽骨に囲まれていますが、右側の歯は骨が破壊され、歯根と骨の間に大きな空間(欠損)が出来てしまいました。
 ここまでの処置が歯肉剥離掻爬手術(FOp)です。歯肉剥離し、汚いものを掻爬(ソウハと読みます。ごしごしこすって綺麗にするというような意味)して綺麗にしたのち、剥離した歯肉を元に戻して、縫合して終了です。

130709-0252-のコピー.jpg
 ところで骨が破壊されて出来た空間(欠損)はあのままで良いのでしょうか?

 いえ、いえ。あのまま歯肉を元に戻しても骨が再生するスピードより、歯肉が再生するスピードの方が何倍も早いので、あの空間に新たな歯肉が入り込んでいくだけなんです

 失った骨が多いほど、骨の自己再生能力だけで無くした部分を元に戻す(再生)のはかなり難しくなります。そこで、人工骨を欠損部に詰め自分の骨が出来てくるまでの間の「つなぎ役」とすることがあります。

 保険診療で使用出来る(認められている)人工骨は、合成のセラミックスであるハイドロキシアパタイト(HA)です。

 人工骨には他にもβ-TCPや動物の骨由来のものもあります。でも保険診療で行う歯周外科に使用することは出来ません(使用を認められていません)。

 人工骨も様々な製品が有り、それぞれに特長を持っています。本当は症状に応じて最も適当な人工骨を選択したいのですが、保険診療ではその選択肢があたえられていません。HAだけが使用出来る人工骨となります。

130709-0272-のコピー.jpg
 歯周組織再生誘導手術(GTR)いう再生療法が保険でも認められています。写真の様に当院でも実施しております。

 これは骨が再生するまでの期間、歯肉に邪魔されないようにブロックするための「膜(マク)」を設置する方法です。

 上の写真がその「膜」を設置したところです。骨欠損の上に膜を載せこの上に歯肉を戻します。歯肉はこの膜を通ることが出来ないため、この膜の下で歯肉に邪魔されることなくゆっくりと骨が再生していくのです。膜はその後吸収して無くなってしまいます。

*吸収しないものもあり、こちらは後で外科により取り除きます。

 本来のGTR法は、人工骨を使用しません。あくまでも歯肉を遮断するだけで、あとは骨が自力で再生するのを待つのです。ただ最近は、写真の様に人工骨との併用もおこなわれるようです。

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  歯周病の再生治療はどのくからいの期間で再生するのでしょう

 実はこの「膜」についても様々な製品が有ります。製品により吸収して無くなるまでの期間が異なったりします。この点は大変重要で、骨が十分に出来る前に膜が吸収して無くなってしまうと歯肉が入り込んで骨の再生が止まってしまいます。ですから、骨が出来るまでしっかりと「膜」としての役割を担って欲しいのです。

 そうすると、骨再生にかかる時間(=骨破壊の程度)にあわせて「膜」を選択したいところですが、保険診療ではその選択肢は与えられていません。吸収性の膜はほぼひとつの商品を選択するしかありません。もちろんこれで骨が出来るまでしっかり吸収せずに歯肉を遮断してくれれば何の問題も無いのですが、工骨を含めてひとつの製品で全ての症例をまかなえるものなど存在しないのです。

 再生治療を受けられる場合、ご自身の歯周疾患が保険診療(指定された製品)でどの程度の治療効果があるのか、担当医としっかりご相談下さい。もしかしたらもっと確実性の高い良い治療方法が担当医より説明あるかもしれません。


 術後約2カ月経過の状態です。治癒にはまだまだ時間が必要ですが、メンテナンス(定期健診)を行いながら経過を診ていくことになります。

 ところで皆さんは治療費がどのくらいかかるかきっと気になるでしょうね。2014年現在の保険歯周外科治療費(代表的なもの)を参考までにお知らせします。
 保険歯周外科治療費は手術対象歯数・術式・使用材料等で異なりますが、歯肉剥離掻爬手術(FOp)で6,300円/歯、歯周組織再生誘導手術(GTR)で8,400円/歯、吸収性の膜が9,250円/枚、人工骨が6,270円/gとなっています。

 患者さんが使用している保険証の種類で負担割合が変わりますが、3割負担の方なら窓口支払額がFOpなら1,890円/歯、GTRなら2,520円/歯+膜2,775円/枚+人工骨料金(使えば)となるでしょうか。

 仮に保険外で治療を受けようとすると歯周病学会のQ&Aにもあるように人工骨・膜・再生医療用の特殊な薬剤の3つで60,000円程度になることも珍しくありません。

LinkIcon日本歯周病学会Q&A  現在行われている歯周病の再生治療はどれくらい費用がかかりますか?

たった3つの材料で60,000円ですから、これにそれ以外の手術でかかる費用を加えると請求額は100、000円を超えても高くないと思います



どうですか?せっかく保険診療でこんなに安く治療が受けられるのですよ
 保険証をお持ちなら治療を受けるチャンスはどなたにもあります。
 でも残念ながら、当院のように歯周外科手術を行ってくれる先生のいる歯科医院でなければ治療を受けることは出来ません。

 ご自分の受診されている歯科医院でこのような治療が受けられるかどうか、担当医の先生にお尋になるとよいでしょう。

「手遅れ」になる前に。

08-10-27-085-のコピー.jpg
初診時。手術前の写真になります。

130904-005-のコピー.jpg
手術後の写真。上の歯肉も、下の歯肉も手術後の方は歯肉の位置が下がっているのが分かるでしょうか。骨が吸収して低くなっていますので、骨の減った分健康な歯肉は下がってしまいます。

 よく術後の痛について問い合わせがあります。治療費以上に心配な事と思います。

 手術中は局所麻酔が効いてますので痛くありません。

 ご自宅に帰られた後、麻酔が切れた後の痛みに関しては、どのような手術だったのか(患部の状態の悪さなど)によります。
 手術が複雑なほど術後の痛みが出る事が多いようです。簡単な手術ではほとんど痛みを訴えられません。

 痛みの程度ですが、皆さんその日は鎮痛薬を必ず服用されます。それで翌朝まできちんと就寝されていますので、眠れる程度の痛ということなのでしょう。

 手術翌日に痛みの程度と患部の状態を確認するために消毒に来院してもらいます。その時に必ずお聞きします。痛みはどうですか?と。多くの方が午前中に鎮痛薬を飲んだきりですとお答えになります。写真の患者さんは全部で4回歯周外科手術を受けられました。上下左右の奥歯です。痛みが強ければ4回も手術は受けて頂けません。

就寝できる程度の痛みを一晩我慢してください。

再生療法で使用する人工骨について。骨が出来るってどういうこと?

 他の患者さんですが、人工骨を使用するとどうなるか説明します。これは左下奥歯のエックス線写真です。1枚目は初診時(当院で治療を始める前)のものです。
 赤矢印が現在の歯槽骨の位置を示していますが、歯周病になる前は黄色破線の位置で起伏の少ない平坦な状態のはずでした。このレントゲン写真から、黄色の破線位置にあった骨が、赤の矢印位置まで吸収して無くなったことがわかります。中等度~重度の歯周病と思われます。
1_edited-1.jpg
赤矢印・・・初診時の骨位置
黄破線・・・健康時の骨位置
青矢印・・・歯石
2のコピー.jpg
 歯周基本治療が終了後、次回は外科処置という状態。青矢印のところには清掃しきれなかった歯石が付着しています。骨に近い歯石は歯肉に覆い隠されていて、完璧に取り除くのは難しいです。しかしこれを取り除かなければ健康な歯肉は取り戻せません。
3のコピー.jpg
 保険診療で再生療法を行いました。歯周外科治療なら、歯根面の状態を目で確認しながらクリーニングできますので、より綺麗な清掃をおこなえます。その後の歯肉の治りも良くなります。
 赤矢印は患者さんの骨です。赤矢印と青矢印の間のモヤモヤした像の部分が人工骨です。これ以上詰め込めないくらい沢山の人工骨を使用しています。エックス線写真は、外科後1週間程度経過した状態です。
4のコピー.jpg
 外科処置からちょうど6ヶ月経過したときのエックス線写真です。赤矢印の位置よりも高い位置に骨の高さが維持されており、その高さも高低差の少ない平坦な形態に近づいています。

 保険診療で使用出来る人工骨は合成のセラミックスですから、完全に自分の骨と同じになるとは考えにくいですが、それでも歯を支える骨様の組織が増えればしっかりとした土台になります。
 骨吸収によりできた歯槽骨の起伏は歯周病治療を困難にしますので、歯槽骨の高低差が人工骨によって整地され起伏の少ない状態に改善されれば歯を残しやすくなります。

 抜歯のような外科処置であれば、術後に口を開ければ歯が無くなっているのがわかるでしょうが、再生療法は、術後に口を開けても再生した骨が見えるわけではありません。

どの程度骨はなかったの?
本当に人工骨など必要な材料は使用されたの?

など手術に不安を抱かれる患者さんも少なく無いと思います。
 当院では可能な限り手術中の写真を撮影し、手術後に写真を一緒にみながら治療内容についてご説明しておりますが、手術部位や手術の難度などにより説明に使えるような写真を上手く撮影できない事もございます。
 そのようなときは上記のようにエックス線写真などを利用しながら、術前・術後の経過をご報告しておりますので、ご安心下さい。

 再生療法や他の歯周外科治療を日常的に施術している歯科医院は、虫歯治療してくれる歯科医院を選ぶよりも難しい事と思います。再生療法は、施術すれば必ず『再生』するというほど簡単な治療ではないと思っています。

 もし医院選びに迷われたなら、担当医に手術の実績をお尋ねになるのも大切なことと思います。自分の歯を残すためにお金と時間と苦痛を支払うのですから遠慮はいりません。

 このページが歯周病に悩む患者さんへの役に立つ情報提供でることを願って。